優越的地位の濫用ガイドライン(原案)について
執筆者
公正取引委員会(以下「公取委」といいます。)は、平成22年6月23日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(原案)(以下「ガイドライン原案」といいます。)を公表しました(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/10.june/10062302.pdf なお、ガイドライン原案に対するパブリックコメントは8月6日で終了しています。)。
近時、公取委は、優越的地位の濫用事例に対する取り締りを強化しています。平成21年の独占禁止法改正では、優越的地位の濫用の定義規定が置かれ(同法2条9項5号)、違法行為に対しては課徴金が課せられるようになりました。公取委は、今回のガイドラインの策定の目的について、優越的地位の濫用規制の考え方を明確化すること等により法運用の透明性を一層確保し、事業者の予見可能性をより向上させるためとしています。ガイドライン原案は、これまでの優越的地位の濫用行為に対する公取委の考え方をまとめた内容となっており、実務上も参考になるものです。そこで、以下では、ガイドライン原案の概要を簡単にご紹介したいと思います。
ガイドライン原案は、優越的地位とは「甲と乙との間に、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すという関係があること」としています。そして、優越的地位の有無を判断するための考慮要素として、(1)乙の甲に対する取引依存度、(2)甲の市場における地位、(3)乙にとっての取引先変更の可能性、(4)その甲と取引することの必要性を示す具体的事実、を挙げています。ガイドライン原案は、これらの考慮要素についてその根拠を示していますが、必ずしも十分なものとはいえません。どのような意見が寄せられているのか、興味のあるところです。
また、ガイドライン原案は、同法2条9項5号イ、ロ、ハに列挙する行為類型について、各行為類型ごとの考え方を示すとともに、想定例と具体例を紹介しています。これらの行為類型は、具体的には、(1)購入・利用規制、(2)協賛金等の負担の要請、(3)従業員等の派遣の要請、(4)受領拒否、(5)返品、(6)支払遅延などですが、考え方の詳細については、ガイドライン原案のポイント(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/10.june/10062303.pdf)を参照していただければと思います。
これらの行為の中には、注意していないとうっかりやってしまいそうなものも含まれていますので、優越的地位の濫用について、これまで興味がなかった方も、一度目を通しておかれることをお勧めいたします。