独占禁止法の改正
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改正独占禁止法が、平成22年1月1日に施行されることとなりました(本年6月に成立)。今回の改正は、(1)課徴金の適用対象の拡大、(2)不当な取引制限等の罪に対する懲役刑の引上げ、(3)企業結合規制の見直し等で、独占禁止法のエンフォースメントを強化したものです。課徴金については、主導的立場でカルテルや入札談合等を行った者に対して、課徴金を5割増しすることが規定されている他、同一企業グループ内の複数の事業者による課徴金減免の共同申請を認めており、厳罰化するとともに、より効果的な抑止を図っています。独占禁止法のエンフォースメントについては、抑止効果が薄いという批判があったため、平成17年に課徴金の増額、審判制度等の規定が改正され、強化されましたが、今回の改正は、さらにこれを強化したもので、現在の競争政策に沿ったものといえます。
企業としても、この改正独占禁止法に対する実務的対応の準備を年内に行うことが要請されています。もちろん、従前と同様、独占禁止法についてのコンプライアンスの体制を整えることが重要ですが、その際には、今回の改正において、排除型私的独占も課徴金の対象となるとされたことに特に注意が必要と思われます。排除型私的独占は、カルテルなどに比べて違法か否かの判断が難しいため、企業の事業活動を過度に萎縮させるとの懸念があり、改正においても議論がなされていたところです。そのため、今回の改正に合わせて、公正取引委員会において、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」というガイドラインが作成され、公表されています。このガイドラインについては、今後も社会の変化や運用実態に合わせて、改訂されていくこととなると思われますが、企業側でも、従業員への周知徹底、各部署のマニュアルの改訂等の対応が早期に必要であると思われます。