第3回 弁護士の3つ道具
執筆者
弁護士の3つ道具といえば,言わずと知れた弁護士バッジ,法律相談や裁判の日程やクライアントの連絡先などを書き入れた訟廷日誌,そして各種法令を収録した六法であろうかと思います。
まず1つめの「弁護士バッジ」ですが,これは,「付けなければならない」ものではなく,あの金ぴかバッジをスーツの上着に付けることに抵抗を感じたり,特に夏場はクールビズで上着を着ないことも多いことから,弁護士バッジを全く付けない人もいます。弁護士バッジは,弁護士であることの証として,被疑者・被告人の接見等で呈示を求められることがあるのですが,この代わりとして,カード型の身分証明書が日弁連から発行されているので,ますます弁護士バッジの必要性は低くなっているのです。
ちなみに,弁護士バッジは,通常は金メッキ(特注すれば純金製もあるそうです)なので,年数が経つと,銀地が出てきて,若々しい金色バッジから貫禄ある銀色バッジに変化していくのですが,所詮メッキなので,思いっきりこすったり,漂白剤に付けると,やはり銀地が出てきます。新人弁護士のころはバッジが金ぴかすぎて恥ずかしいので,このような裏技を使ってバッジの色をくすませ,経験ある弁護士を装ったりする人がいるかもしれません。私もバッジはほとんど付けませんが,なぜかいい感じにくすんだ銀色になっています。
2つめの「訟廷日誌」は,これを無くしてしまうと,訴訟や相談などの予定が全く分からなくなるという最重要アイテムなのですが,最近ではiPhoneやBlackBerryなどの携帯電話やPDAでスケジュール管理や連絡先管理をする人も多く,訟廷日誌の利用率は下がっているようです。
3つめの「六法」というのは,六つの法律が収録されている,という意味ではなく,憲法,民法,商法,刑法,民事訴訟法,刑事訴訟法という基本六法と,それに関連する法令を収録している,という意味で,手もとの平成21年版模範六法(三省堂)の法令索引を見ますと,実に400前後もの法令が収録されています。ですが,国の電子政府プロジェクトのお陰で,法令データもほぼ全てがインターネット(http://law.e-gov.go.jp/)で検索できるようになり,少なくともデスクに向かっているときは,専らこれを使うようになっています。
こんな風に,私たちの仕事も,効率よく便利に変化しているはずですが,Work expands to fill the time available for its completion.「仕事の量は利用できる時間を使い切るまで膨張する(パーキンソンの法則)」というとおり,仕事時間は一向に減る様子がありません。