第37回 企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン
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- 本年7月15日,日本弁護士連合会から「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が発表されました。
以前は,企業の不祥事が発覚した場合には,経営者オーナーが担当役員や従業員を責任者に任命して不祥事により生じた事態の収拾を命じることが一般的ではなかったと思います。
しかしながら,近時,コンプライアンスの意識の高まりなどから,事業の不祥事が発覚した場合に,業績が悪化したり信用が棄損するだけでなく,多くの取引先から取引停止を命じられたり,消費者の買い控えにより売上が激減し,また,これに併せて株価が急落し,ひいては,倒産に追い込まれる事態も生じるようになりました。
そこで,企業不祥事は,取引先,債権者,従業員,株主などのステーク・ホルダーに多大な影響を及ぼすものであるとの理解から,このようなステーク・ホルダーに対する説明責任を尽くすということを目的として,弁護士等の外部の者を交えた委員会を設けて調査を依頼するケースが増加しており,我々の事務所でも過去このような委員会に関与してきました。
- このような委員会には,企業が調査の信ぴょう性を高めるために弁護士等に対して内部調査への参加を依頼して設置する内部調査委員会と,企業から独立した委員のみをもって構成される第三者委員会がありますが,この度,日本弁護士連合会から後者の第三者委員会についてのガイドラインが発表されました。
その理由について,「第三者委員会の仕事は,真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステーク・ホルダーであることや,標準的な監査手法であるリスク・アプローチに基づいて不祥事の背後にあるリスクを分析する必要があることなどから,従来の弁護士業務と異質な面も多く,担当する弁護士が不慣れなことと相まって,調査の手法がまちまちになっているのが現状である。そのため,企業等の側から,言われ無き反発を受けたり,逆に,信憑性の高い報告書を期待していた外部のステーク・ホルダーや監督官庁などから,失望と叱責を受ける場合も見受けられるようになっている」ことから「今後,第三者委員会の活動がより一層社会の期待に応え得るものとなるように,自主的なガイドラインとして」このガイドラインを策定したと説明されています。
もちろんこれは文字通りガイドラインであり,このガイドラインに従わなければ第三者委員会の活動が無効になるということはありませんが,日本弁護士連合会がこのようなガイドラインを発表したことは大いに意義があることであり,第三者委員会だけではく内部調査委員会の活動方針についても非常に参考となると考えられますので,ご紹介させていただきます。
本ガイドラインについては,日本弁護士連合会のHPで確認できますので,興味のある方はご確認下さい。
日弁連ホームページ(http://www.nichibenren.or.jp)