第46回 5分でわかる個人情報保護法
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最近,中国船衝突事件の映像流出問題や警視庁公安部の捜査協力者の実名等が記載された捜査情報流出問題など,「情報の流出」が世間の耳目を集めました(現在は歌舞伎俳優殴打事件の陰に隠れている印象がありますが…)。
そこで,今回は,個人情報保護法についてお話しをしたいと思います(少し強引ですね…)。
平成16年4月に個人情報保護法が施行されて6年以上が経過しましたが,今でも,顧問先の皆様から個人情報に関するご相談を受けることが結構あります。
その理由としては,企業のあらゆる部署において個人情報の取扱が問題となる場面があることに加え,普段は個人情報保護法の条文を直接目にすることがなく,個人情報保護法がどのような体系で構成され,それぞれの体系でどのような義務が課されているか,整理する機会が少ないからではないかと思います。
しかし,実は,ご相談を受ける内容に関係する条文自体は意外と少なく,一度整理してしまえば,少なくとも問題の所在は分かるというケースが大部分です。そこで,個人情報の取扱がよく問題となる場面とルールを簡単にご説明します。
- 個人情報の取扱が問題となる場面
個人情報保護法上,個人情報の取扱が問題となることが多いのは,概ね,次の3つの場面です。
(1) 個人情報の「取得」の場面
(2) 個人情報の「管理」の場面
(3) 個人情報の「提供」の場面 - 個人情報保護法上のルール
そして,前記1(1)から(3)のそれぞれの場面において,個人情報保護法は,主に,次のようなルールを定めています。
(1) 個人情報の「取得」の場面[1] 適正な方法による取得(法17条)
[2] 取得の際の利用目的の通知・公表(法18条)
(2) 個人情報の「管理」の場面
[1] 漏えいや滅失防止のための安全管理(法20条)
(3) 個人情報の「提供」の場面
[1] 第三者への提供の場合の本人の同意(法23条)
前記2のうち,(1)[1]の内容は「不正な手段により個人情報を取得してはならない」,(2)[1]の内容は「個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」というもので,少なくとも条文上の内容自体はわかりやすいものです。
つまり,個人情報の取扱が問題となる多くのケースで,条文自体が複雑だったり難解なものは,実は,上記(1)[2]の18条と,(3)[1]の23条に限られると言えます。
もちろん,実際には上記の各場面が混在していたり,別の場面が問題となるケースもあります。
しかし,皆様が個人情報の取扱の問題に直面した場合,まずは,前記1のどの場面に関する問題で,前記2のどのルールが問題になっているのか,それぞれ整理して条文を確認するだけでも随分方向性が見えてくると思います。
そして,それでもやはり良く分からない場合,あるいは,少しでも疑問が残るような場合には,ご遠慮なくお気軽にご相談ください。
【マメ知識】
冒頭で述べた各事件について,海上保安庁の職員には「国家公務員法」上の守秘義務違反が問われますが,警視庁の職員には「地方公務員法」の守秘義務違反が問題となります(ただし,警視正以上の身分は国家公務員となるようです)。ちなみに,漏洩したのが「警視庁」職員ではなく「警察庁」職員だった場合には「国家公務員法」の問題となります。意外とややこしいです。Share