第62回 ニューヨーク研修報告
執筆者
5月12日から27日までの約2週間,当事務所と友好関係にある米国の法律事務所のニューヨークオフィスで短期研修を受けてきました。
今回の私の主な研修目的は(1)英語力の向上と(2)米国の個人情報保護法制およびコンプライアンスに関する研究でしたので,これらの点について簡単にご報告いたします。
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英語力の向上について
私は,大学生の時に英文解釈の参考書を執筆するなど,いわゆる「受験英語」は得意でしたが,留学経験もなく,海外旅行の経験もそれほど多くはありませんでした(当事務所には英語を母国語とするスタッフもおり,週1回外部の講師による英会話レッスンが開かれていますが,私自身は英語案件を扱うことが少ないため,生きた英語を使う機会は多くありませんでした。)。しかし,今回の研修においては,指導担当弁護士やスタッフとのディスカッションやコミュニケーション,文献・資料の調査,セミナーの聴講等,ほぼ全て英語での研修であり,日常生活においても,在NY邦人との会食等以外は英語を使用し,また,滞在したホテルでも意識的にTV放送等を聞いていました。
そうしたところ,英語力,特にヒアリング・スピーキングについては,「慣れ」の側面が大きいこともあって,徐々に英単語がスムーズに頭に入るようになり,また,指導担当弁護士(全く日本語はできません。)からも,社交辞令ながら「英語の会話の“反応”が早くなった。」と褒めてもらうなど,2週間程度の研修でも予想以上に向上することを実感することができました(もちろん,買い物をした際に店員の英語が理解できず,まごついていたところ,店員から,「スペイン語は話せるのか?」と訳のわからない文句を言われるなど,それなりの苦労もありましたが…)。
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米国の個人情報保護法制およびコンプライアンスに関する研究
(1) 米国においては,日本の個人情報保護法のように個人の情報の取扱について概括的に規定した法律はありませんが,医療分野や金融分野など,分野別に個人情報(プライバシー)を保護するための法律があります(日本の個人情報保護法に関する各省庁の「ガイドライン」が「法律」として制定されているというイメージです。)。
また,私の指導担当弁護士が,医療分野における個人情報(プライバシー)の保護に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act・医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律,および,Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act・経済的および臨床的健全性のための医療情報技術に関する法律)に詳しかったため,これらの法律を研究することにより,米国の個人情報保護に関する知見を深めるとともに,日米の個人情報保護法制のあり方や弁護士の関わり方について,ディスカッションすることができました。
(2) また,アメリカに拠点をおいて活動を行う企業にとって重要な法律の一つに,海外公務員に対する贈賄を禁止する法律(Foreign Corrupt Practices Act・連邦海外腐敗行為防止法。以下「FCPA法」といいます。日本法では不正競争防止法に同旨の規定があります。)がありますが,FCPA法の研究や,これに基づくコンプライアンスに関するセミナーを聴講することにより,FCPA法を始めとする各国の海外公務員に対する贈賄禁止に関する法律に関する知見を深めるとともに,具体的なコンプライアンス体制構築のためのアプローチ方法を学ぶこともできました。
上記の各研修のほか,米国における法律事務所の実情や企業法務弁護士の業務についても知見を深めることができましたし,弁護士,会計士,企業経営者,企業駐在員等,様々な分野で活躍する多数の在NY邦人と知り合うことができました。もちろん,ニューヨーク観光もしっかりしてきました。これらの経験については,またの機会にご報告したいと思います。
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