第100回 改正著作権法(2)
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2012年6月20日に可決成立した改正著作権法については,違法ダウンロードに対する刑事罰適用が報道等でもクローズアップされ,弊所HPの福元弁護士のコラム(第97回コラム http://www.higashimachi.jp/column/column97.html)でも改正の概要について解説されておりますが,今回のコラムでは,改正のもう一つの柱である,いわゆる「写り込み」に関する改正について取り上げてみたいと思います。
例えば,あなたが新長田駅前の鉄人28号のモニュメントの前でデジカメを使って記念撮影をし,その画像をインターネット上の自身のブログにアップしたとしましょう。その画像には,鉄人28号が写り込んでいました。鉄人28号の著作権は横山光輝が設立した株式会社光プロダクションが保有していますので,あなたが同プロダクションに無断で行った鉄人28号の写真撮影は,著作権法上の「複製」に該当し,著作権侵害となります。
しかし,鉄人28号の場合には,著作権侵害の例外規定の適用があります。すなわち,著作権法46条は,美術の著作物でその原作品が街路,公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は,同条1号ないし4号の例外を除き,いずれの方法によるかを問わず,利用することができると規定しています。したがって,屋外の場所に恒常的に設置されている鉄人28号については,撮影した写真に写り込んでいても,ホームページやブログ等にアップすることができるということになります。
では,鉄人28号のように屋外に設置された著作物ではなく,屋内の著作物が写真に写り込んでいた場合は,どうなるのでしょうか。この点に関し,著作権法32条1項は,公表された著作物は、引用して利用することができると規定し,正当な目的での引用による例外を認めています。そうすると,屋内に設置された著作物については,写真に写り込んでいたとしても,著作権侵害にならないように思われますが,引用については,出所の明示が必要となるため(著作権法48条),ホームページやブログ等にアップするにしても,きちんと出所の明示をしておかなければ,やはり著作権侵害となってしまいます。
そこで,このようなホームページやブログ等への掲載行為について,改正著作権法は,「写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は,当該創作に伴って複製又は翻案することができる。」(同法30条の2第1項)と規定し,屋内の著作物であっても出所の明示なしに複製できることを認めています(ただし,写り込んだ著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は除かれています。)。さらに,同条2項は,写り込んだ著作物は,写真等の利用に伴って利用することができると規定していますので,これにより,写り込んだ著作物をブログにアップすることが可能となります。
以上のような規定の新設によって,絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載することや,看板やポスター等に描かれている絵画を,インターネット送信することができるようになったわけですが,どのような場合にこの規定の適用があるかについては,上記規定の解釈とも関係し,今後の事例の集積を待つ必要があると思われます。