2022年株主総会のチェックポイント①(新型コロナ問題による株主総会の変化)
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1 はじめに
6月の株主総会シーズンを迎え、企業のご担当者の皆様はご多忙のことと存じます。
ところで、当事務所では、2017年に、「株主総会のチェックポイント」というテーマでコラムを掲載しておりました。
しかし、2019年に発生した新型コロナの影響により、株主総会の在り方は大きく変化しました。
そこで、今回と次回のコラムでは、新型コロナ問題による株主総会の変化をご紹介したうえ、これを踏まえた株主総会のチェックポイントについてご紹介したいと思います。
2 新型コロナ問題による株主総会の変化
- 公益社団法人商事法務研究会が発行している「旬刊商事法務」(商事法務研究会編)では、毎年、1500社以上の上場企業における株主総会の状況を「株主総会白書」として紹介しており、私達も、顧問先様の総会指導にあたり、参考にさせていただいています。
- この「株主総会白書」において、新型コロナ問題の影響がなかった2019年版(2019年12月発行。NO.2216)と最新の2021年版(2021年12月発行。NO.2280)の各株主総会の状況を比較すると、以下のとおり、新型コロナ問題が株主総会の運営に大きな影響を与えたことが分かります。
- 総会の出席株主数(現実の出席株主)
2019年版においては、21人~40人(16.7%)、300人超(15.3%)、41人~60人(15.2%)あたりがボリュームゾーンでしたが、2021年版においては、0人~20人(59.6%)、21人~40人(25.1%)となっています(2019年版・117頁、2021年版・126頁)。 - 総会の所要時間
2019年版においては、61分以上90分以下(22.9%)、91分以上120分以下(10.1%)あたりがボリュームゾーンでしたが、2021年版においては、26分以上30分以下(16.2%)、21分以上25分以下(14.7%)となっています(2019年版・103頁、2021年版・113頁)。
- 総会の出席株主数(現実の出席株主)
- 新型コロナ問題が発生してから、総会のご担当者は、どのようにして株主総会を「少人数」かつ「短時間」で実施するか、頭を悩ませてこられたと思いますが、その成果が上記の数字に表れていると思います。
そして、(それだけが理由ではありませんが)「少人数」または「短時間」で株主総会を実施するために採用されたと思われる措置を講じた結果として、以下のような総会運営の変化も認められます。- お土産・懇親会
2019年版においては、「お土産」を出している会社は62.8%ありましたが、2021年版においては7.6%となっています(2019年版・52頁、2021年版・60頁)。
また、「懇親会」についても、2019年版においてはこれを開催した会社が16.4%ありましたが、2021年版においては1.3%となっています(2019年版・55頁、2021年版・62頁)。 - 議案の審議方法
2019年版においては、いわゆる一括上程一括審議方式が69.6%でしたが、2021年版においては77.6%となっています(2019年版・114頁。2021年版・123頁)。 - バーチャル株主総会
株主が物理的に一堂に会することを前提としないハイブリッド型バーチャル総会(参加型)について、2019年版においてはこれを実施または次回以降の総会で実施する予定とした会社は0.5%でしたが、2021年版においては26.5%となっています(2019年版・169頁、2021年版・181頁)。
- お土産・懇親会
- 上記のほか、2021年版では、新型コロナへの対応のために実施された以下のような取組みが紹介されています。
- 招集通知の記載内容
2021年版においては、来場自粛の要請(来場株主数を一定程度限定する(35.2%)、来場を原則遠慮いただく(47.1%))、事前の議決権行使の要請(79.2%)、座席数が少ないことやスタッフのマスク着用等の当日特別対応の案内(65.8%)など、新型コロナに対応するための招集通知記載内容が紹介されています(2021年版・68頁)。 - 会場設営・機器等
2021年版においては、会場設営について、株主間の座席間隔の確保(99.3%)や役員席と株主席の間隔の確保(82.1%)などのソーシャルディスタンスへの配慮、新型コロナ感染の兆候がある来場者用のスペースの用意(9.9%)など、新型コロナ感染拡大防止のための工夫をした例が紹介されています(2021年版・47頁)。
また、来場者配布用のマスク(83.8%)、消毒用アルコール(97.6%)、非接触型体温計(86.7%)、アクリル板等(議長席等について80.6%)、スタッフ用手袋(65.3%)など、新型コロナ感染拡大防止のための準備の例も紹介されています(2021年版・46~47頁)。 - 総会の進行方法
2021年版においては、報告事項の報告時間の短縮(76.9%)、監査報告の割愛や議長による報告による時間短縮(35.0%)、決議事項の説明時間の短縮(31.3%)など、従前の総会の進行方法の変更について紹介されています(2021年版・111頁)。
- 招集通知の記載内容
3 2022年の株主総会に向けて
- 前記のとおり、新型コロナ問題の発生により、昨年までの株主総会は大きな影響を受けました。
- ただし、①新型コロナ問題が発生して丸2年が経過して「zeroコロナ」から「withコロナ」が社会情勢となりつつあり、株主の皆様も、「今年こそは」と出席を検討する可能性が十分にあること、②新型コロナ問題への会社の取組みはもちろんのこと、サステナビリティやダイバーシティへの対応などのコーポレートガバナンス・コードの改訂、新たな市場区分の適用の開始など、株主が経営陣に対して直接質問をしたいと考えるような事項が多数あることなどから、今年度以降、株主総会の状況が再び変化する可能性は高いと思います。
そして、コロナ禍の状況の中で出席する株主の皆様の中には、積極的に質問をしたり意見を述べたいと考える方が相当数おられると思われ、会社としては、従前と同様あるいはそれ以上に総会運営には留意する必要があると思います。
これらの状況を踏まえたうえ、次回のコラムにおいては、2022年の株主総会のチェックポイントについてご紹介いたします。
以上