踊る阿呆の法的性質
執筆者
-
夏の足音が聞こえてくる季節になりました。
私は、修習時代の1年間を徳島で過ごしたのですが、徳島では夏の足音というのはたとえではなく、はっきりと聞こえるんです。そう、阿波踊りの鳴り物の音と威勢のいい掛け声です。街中で徳島の夏の風物詩である阿波踊りの練習に励む人々の姿が見られるようになり、いやがおうにも心が踊ります。同じ阿呆なら踊らにゃ損損!
阿波踊りでは、一つの踊りのグループを「連」といいます。連には、プロの有名連から素人連まで様々で、それぞれの連が踊りに特徴を持っており、本番では各連が競い合うように自慢の踊りを披露します。
-
ところで、この連というのは法律的にはどのような位置づけの団体なのでしょうか。
法人格を法律上付与されない任意団体については、通常、組合と権利能力なき社団に分けられることになります。
組合とは、組合契約により成立した団体であり、民法667条以下に規定されています。複数人の出資約束で成立し、組合契約は明示的なものでなく、黙示の合意でも良いと考えられています。
一方で権利能力なき社団は民法上の規定はなく、社団としての実質を有しながら法律上権利義務の主体たりえない団体のことです。例えば、法律がないために法人になることができない団体(同窓会やサークル)、法人格を取得できるが、手続上の煩雑さ等を理由に法人格を取得していない団体等です。
-
組合と権利能力なき社団はどのようにして区別するのでしょうか。
判例においては、権利能力なき社団の成立要件は(1)団体としての組織を備えているか、(2)多数決の原則が行われているか、(3)構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するか、(4)その組織についての代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているかどうかにより個別具体的に判断される、とされています。厳密に言うと、あらゆる任意団体が組合と権利能力なき社団に峻別されるわけではありませんが、上記4つの要件に該当する団体が権利能力なき社団、それ以外は組合ということになります。
-
組合と権利能力なき社団の一番の違いは、団体の財産、債務の扱いです。
組合団体の財産は、構成員全員に合有的に帰属し、各構成員が自由に財産を処分することは認められないことになりますが、潜在的持分を有することになり、団体の脱退により持分が払い戻されます。一方で、権利能力なき社団の財産は、構成員全員に総有的に帰属し、潜在的持分は観念できず、財産の使用・収益のみ認められることになります。つまり、財産についての潜在的持分の有無において違いが生じることになります。
債務についても、組合においては構成員全員に合有的に帰属し、権利能力なき社団については総有的に帰属します。
具体的に言うと、組合において各構成員は無限責任を負うことになり、債権者の個人財産への差押えが可能となります。一方、権利能力なき社団の構成員は有限責任を負うに留まり、債権者は団体財産のみ差押えが可能ということになります。つまり、構成員が有限責任か、無限責任かの違いがあります。
-
連について、組合なのか権利能力なき社団なのかは各連の運営や構成等によって変わるので一概には言えませんが、一般的には権利能力なき社団に当たることが多いと思います。組合なのか権利能力なき社団なのかで、構成員として負う責任が大きく変わりますので、みなさんも自分が所属している任意団体がいずれに当たるかを一度考えて見られた方がいいかもしれません。
さもなければ、思いがけず、「阿呆」ではなく馬鹿を見る結果になってしまい、あわを食ってしまうかも・・・・