スポーツ団体ガバナンスコードについて
執筆者
「ガバナンスコード」と聞くと、東京証券取引所が制定した「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」を思い浮かべる方が圧倒的に多いと思いますが、スポーツの世界にも「ガバナンスコード」があるのをご存知でしょうか。それが「スポーツ団体ガバナンスコード」です。
スポーツをすると、自然に楽しさや喜びの気持ちがわき出るとともに、健康の維持・増進につながり、また、観る側にも感動を与え、さらには、地域社会の活性化、経済効果もうみだします。このように、スポーツには、多面的な意義や価値があります。そのような良いことづくしであるスポーツの普及・推進に重要な役割を担っているのがスポーツ団体です。従来からスポーツ団体は、スポーツを愛する人々のボランティア精神・努力に支えられ、スポーツの発展に寄与・貢献してきました。
スポーツ基本法5条においても、各スポーツ団体は、自らの主体的な努力により適切な組織運営を図っていくことが求められています。しかしながら、スポーツ団体は善意やボランティア精神に支えられてきた団体であるがゆえ、内部のルールが明確でないまま組織運営がなされ、責任の所在が曖昧であったり、コンプライアンス意識が徹底されていない等、ガバナンスの確保がおざなりになってきた面があります。
皆様も、近年、中央競技団体(国内の各スポーツを統括する団体をいい、たとえば「日本・・・連盟」「日本・・協会」等がこれにあたります)をはじめとするスポーツ団体の様々な不祥事や現場における暴力行為・ハラスメント問題等の報道は記憶に新しいことと思います。
そのような中、国が動きました。スポーツ基本法においては、スポーツ団体は、スポーツ振興事業を適正に行うため、運営の透明性の確保を図るとともに、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成するよう努めるものと定められています。スポーツ庁は、同法が定めるスポーツ団体の遵守すべき基準の作成に資するよう、適切な組織運営を行う上での原則・規範として、令和元年6月に中央競技団体向けガバナンスコードを、同年8月に一般スポーツ団体向けのガバナンスコードを策定したのです。
中央競技団体向けガバナンスコード(1420887_1.pdf (mext.go.jp))は原則1~13によって、一般スポーツ団体向けガバナンスコード(1420888_1.pdf (mext.go.jp))は原則1~6によって構成されています。
各スポーツ団体においては,ガバナンスコードの各原則・規定を遵守するよう努めるとともに、ステークホルダー等への説明責任を果たす観点から、その遵守状況について自主的に自己説明を行い、その結果を定期的に公表することが望まれるとされています。公表内容は、スポーツガバナンスウェブサイト | SPORT GOVERNANCE WEBSITE (jpnsport.go.jp)で確認できます。関わりのあるスポーツ団体、あるいは、これから関わろうとするスポーツ団体がありましたら、同ウェブサイトから、公表内容を確認されてみてはいかがでしょうか。
スポーツ団体は人員・規模・体制や成り立ち・歴史・上部団体との関係等まさに千差万別であり、ガバナンスコードの遵守についても、既に十分な対応ができている団体もあれば、なかなかすぐにはすべてを遵守することは難しいという団体もあると思います。団体の規模等に応じて、それぞれが自身の団体の状況を定期的に点検・評価し、外部にむけて公表していくことが、適正なガバナンスの確保や実行に資することになります。これによって不祥事を防止できれば、メンバー、団体、スポーツに関わるすべての人とスポーツそのものを守ることにもつながることになります。
長い人生において好きなスポーツをする場があり、ともにする仲間があるというのは、とても幸せなことだと思います。そのスポーツをする場や仲間を、そしてスポーツを守っていくためにも、このスポーツ団体ガバナンスコードが前向きに捉えられ、現場に真の意味で根付くことを心から願います。