日本人が知っておくべき食用大麻の話
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大麻グミを食べて体調不良を訴える人が相次いだ問題を受け、厚労省は、大麻グミに含まれている合成化合物HHCHについて、薬機法の指定薬物に追加しました。 この薬機法の指定薬物への追加の手続については、前コラム「日本人が知っておくべき危険ドラッグの話」でも書いているところですが、法の目をかいくぐって精製された危険ドラッグの流通を早急に防ぐ手続です。
今回のコラムでは、そもそも大麻グミをはじめとする「食用大麻」の話をしたいと思います。
1 Cannabis Edible(食用大麻)とは?
アメリカの大麻が合法化された州では、ブラウニーやグミ、クッキーのパッケージに「50㎎THC SATIVA」といった表示の書かれた商品を見かけることがあります。一見すると普通のお菓子ですが、これは食品に大麻の成分が含まれたCannabis Edible(食用大麻)と呼ばれるものです。このお菓子には、Sativa種のマリファナから抽出されたTHCが50mg含まれている、ということです。食用大麻は、食品という形で大麻の成分を簡単に摂取でき、さらに味も市販のお菓子とそん色ないことから、気軽に利用する人も多く、広く流通しています。また家庭用の「大麻入り料理」のレシピ本等も売られており、「大麻を食べる」ということは吸引と並んで受け入れられていることがよくわかります。
2 食用大麻の危険性
一方で、食用大麻はその気軽さとは裏腹にその危険性を指摘する声も多くあります。例えば、アメリカではマリファナクッキーを推奨されている量をこえて食べた大学生が突然バルコニーから飛び降り、死亡したという事故も報告されています。アメリカにいたころ、私も友人から「大麻を吸うより、Edible(食用大麻)を食べた方が効果を強く感じる」「吸うのは何も感じないけど、Edible(食用大麻)を食べて目が回って倒れた」という話を聞いたことがあります。なぜこのような効果の違いが出るのかは、明確ではありませんが、成分の摂取の過程にあるといわれています。喫煙での摂取の場合には、肺を通じて大麻の成分が摂取され、すぐに大麻の効用が得られます。一方で、経口摂取の場合には、食品が消化されて体内に摂取されるまでに時間がかかるため、効用を感じるのに30分以上かかるといわれています。そのため、効用が出るのを待ちきれず、さらに大麻入り食品を口にし、結果的に多くの大麻を口にしてしまうことになるのです。また、そもそも吸入よりも経口摂取のほうが強い効用を得られるという見解もあります。さらに、経口摂取の場合には、緩やかに体内に吸収されるため、効用がより長く持続するという特徴もあります。
食用大麻は、効用の点のみならず、その形態自体にも危険があるといわれています。見た目が普通のお菓子と変わらないため、子供やペットが誤って口にする危険があることが指摘されています。また喫煙での摂取と違い、「お菓子を食べる」という行為への抵抗感が薄いことから、青少年が安易に手を出す危険性があるということも指摘されています。
3 日本における食用大麻の適法性
日本における食用大麻の適法性は、危険ドラッグと同様に考えることができます。前コラム「日本人が知っておくべき危険ドラッグの話」でも書きましたが、薬機法で指定薬物とされている成分を含む食用大麻(食品)を所持することは、違法であり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科)となっています。今回、問題となっている大麻グミの成分は、HHCHであり、これまでは指定薬物ではなかったため、法律上は合法でしたが、指定薬物に追加されたため、本年12月2日以降は、「違法」ということになります。
4 食用大麻≠食べられるから安全
食べられるように加工されているから、食用大麻は安全なのではないかと考える人がいるかもしれません。しかしながら、経口摂取で体内に取り入れられた大麻が人体でどのように機能するのか、摂取する人によって効用にどのような違いが出るのか等はまだまだはっきりしません。そもそも日本で販売されている大麻グミや大麻クッキーは、規制を逃れるための化学的に合成された成分であり、それらが人体にどのような効果を及ぼすか、またそもそもどの程度の量が含まれているかなどは全く分からないのです。大麻グミ、大麻クッキーといったポップな響きに騙されないように気を付けなくてはいけません。
以上